これからお産に臨む産婦さんがリラックスできるように寄り添って、陣痛発作時は一緒に呼吸法をしたり、産痛を緩和するケアができます。
正常経過における分娩期の看護の基本を復習して臨むと、お産の流れがよくわかります。
本記事の内容
- 看護師の役割は、産婦に満足が得られる分娩を体験していただくこと
- 分娩の定義
- 分娩の分類
- 分娩の経過
- 破水
- 排臨と発露
- 分娩の3要素
- 具体的にどんな看護をしたらよいのか(重要)
目次
看護師の役割は、産婦に満足が得られる分娩を体験していただくこと
産婦さんと産科スタッフのあいだにわだかまりがあると、満足の得られる分娩体験にはなりにくいです。産婦が “意思決定し分娩を乗り越える” というかかわりかたがベストです。
お産は、母親の、その後の育児の取り組みに影響します。
なので、安全に生むための医学的介入が産婦の自己コントロール感を奪うということを念頭におき、自信を無くさせないよう支援します。
近年は 出産年齢が 高齢化してきているので、生活習慣病や 慢性疾患を かかえる方の出産や 母体の体力・予備力の低下などをちょっと頭のすみに置いて注意を払う必要もあります。
看護学生が実習するにあたっては、分娩の基礎知識を事前に学習しておくことは必須です。では、分娩についてまとめていきましょう。指導ナースから質問されるので覚えておきましょうね。
分娩の定義
産婦:分娩期にある女性
初産婦:妊娠22週以降の分娩を初めて経験する産婦
経産婦:妊娠22週以降の分娩を経験したことのある産婦
分娩期:分娩第1期~第3期終了までの期間
褥婦:分娩第3期終了から産後6~8週間にある女性
早期産:妊娠22週0日から36週6日までの期間における分娩
正期産:妊娠37週0日から41週6日までの期間における分娩
過期産:42週を過ぎた分娩
産道:骨産道、軟産道
娩出力:陣痛、腹圧
娩出物:胎児およびその付属物
*分娩の3要素=産道、娩出力、娩出物
分娩開始:1時間に6回以上の規則正しい子宮収縮 or 10分(以内)毎の子宮収縮
(陣痛発来、初発陣痛ともいう)
分娩の分類
分娩経過で分類
✔正常分娩:正期産期(37週0日~41週6日) に自然に陣痛が発来。成熟した胎児を経膣的に前方後頭位(母の前方つまり恥骨側に胎児の後頭がある)で娩出する分娩
・母児ともに障害や合併症がなく予後良好
・分娩経過において手術的操作を行っていない(会陰切開は正常分娩の範囲)
・遷延分娩ではない
✔異常分娩:妊娠週数や母児の健康状態などが正常から逸脱した状態の分娩
分娩様式で分類
✔経膣分娩:胎児およびその付属物が産道を介し膣を通って娩出される分娩
✔急速遂娩(2期短縮)
・〈吸引分娩〉吸引娩出器を用いて胎児を急速に娩出させる方法
・〈鉗子分娩〉左右2葉からなる金属製鉗子の両葉間に児の頭部を把持して牽引することで、胎児を急速に娩出させる方法
✔帝王切開術分娩:子宮下部の前壁を切開し経腹的に胎児およびその付属物を娩出させる方法
分娩経過
分娩第1期 (開口期):分娩開始から子宮口全開大 (10cm)まで
分娩第2期 (娩出期): 子宮口全開大から児の娩出まで
分娩第3期(後産期) :児の娩出から、胎盤および卵膜の排出が完了するまで(分娩が完了)
分娩第4期 :胎盤および卵膜の排出後2時間まで
破水
破水とは
胎児を包んでいる卵膜が破れ、羊水が流れ出ること
✔前期破水:羊水の流出が続けば、引き続いて陣痛が誘発され、分娩に至ることが多い。(破水なのか?尿漏れなのか? 破水の確定診断をする必要があるので、自宅などにいるときは 分娩予定 の施設に連絡するよう指導されています。入院中の産婦さんに対しては、臍帯下垂、感染、胎児心拍に注意が必要です)
✔早期破水:陣痛開始以降子宮口が全開大する前 に起こる破水
✔適時時水:子宮口全開大のころに起こる破水
✔破水の診断:羊水のPH=7.1~7.3 BTB液青変
✔遅滞破水:子宮口が全開大し先進部が深く骨盤腔内に進入しても、破水がまだ起こらない。遅滞破水が起こるのは、たいてい卵膜強靱(きょうじん)、 先進部で胎胞を形成する前羊水の量が過少、子宮頸管が急速に開大したときなど
✔被膜児:破水しないまま胎児が胎盤とともに娩出されてしまうので、早急に卵膜を破り、呼吸が開始できるようにする必要がある
排臨・発露
排臨:陣痛発作時に胎児先進部が下降して陰裂の間に見えるが、 陣痛間欠時には後退
発露:排臨後、さらに児頭の下降が進み、陣痛間欠時でも後退しない状態
分娩所要時間
分娩開始から胎盤娩出までにかかる時間(分娩第1期から分娩第3期までの時間)
・初産婦の平均分娩所要時間は12~16時間
・経産婦では5~8時間
・遷延分娩:分娩所要時間 が初産婦で30時間以上, 経産婦で15時間以上かかる場合
(初産婦は 経産婦に 比べて 産道や 子宮口が 硬いから 分娩に時間がかかり、産直に裂傷が起こりやすいのです)
分娩の3要素
1 骨産道と軟産道
骨産道は、骨盤入口部、骨盤濶部、骨盤峡部、骨盤出口部の4つの平面でとらえます。この4つの平面の中心を結んで骨盤誘導線を想定し、胎児はその向きを進んで娩出されます
軟産道は、子宮の下部である子宮峡部・子宮頸管、膣、会陰からなる胎児の通過路です。陣痛によって柔らかくなり、また、陣痛は胎児を押していくので胎児の下降もてつだって広がっていきます
2 娩出力
陣痛は、胎児を外へ押し出すために発作期と間歇期という陣痛周期を繰り返します。初発陣痛の1周期は10分おき、次第に間隔は短くなり、強くなりながら、いよいよ胎児娩出という頃には1から2分おきになります。
腹圧もまた娩出力です。分娩期極期では制御しづらく、陣痛とともに共圧陣痛となって胎児を娩出します
3 胎児及び付属物
✔胎盤:500g前後(胎盤重量:胎児重量=1:6)、円盤状、子宮体部に付着。娩出後の胎盤は直径15~18cm 厚み15~2cm
*前置胎盤:胎盤が子宮の低い位置に付着し、組織学的内子宮口を覆うか、一部が子宮口にかかる状態
*低置胎盤:組織学的内子宮口 2cm以内に胎盤の辺縁がある状態
*常位胎盤早期剝離:胎盤が正常位置に付着しているにもかかわらず、妊娠中または分娩進行中の胎児娩出前に子宮壁から剥離すること
✔臍帯:胎盤の胎児面と胎児の臍をつなぐ。2本の臍動脈と1本の臍静脈をワルトン膠質が包み、捻転し、妊娠末期には長さ50~60cm 直径1.5cm程度
✔羊水:羊膜腔を満たす液。妊娠末期には 胎児皮膚からの剝離物 が混ざり乳白色
羊水量は妊娠の進行とともに増加し妊娠32~36週に最大量 (700~800ml)その後徐々に減量、正期産期には500mL程度、過期産では500mL未満となる。
*羊水800mLを超える場合は羊水過多という
✔卵膜:3枚。母体側から順に 脱落膜(母体由来)、絨毛膜(胎児由来)、羊膜(胎児由来)
看護実習生は、具体的にどんな看護をしたらよいか
看護学生の実習を受け入れている病産院にて 実習することになりますが、ほとんどが見学実習で、分娩第1期のケアに入らせてもらえることになろうかと思います。
なので、看護実習性が、具体的に何ができるかというと………
分娩は、分娩の3要素が影響しあいながら経過するということを念頭に、
① 分娩監視装置のモニタリングと触診による娩出力の増強の観察
② 産道の拡大に伴う痛みの緩和(補助動作や呼吸法)
③ 子宮口全開大までは努責回避の声掛け
④ 胎児の下降を観察しながら産婦さんを励ます
⑤ 汗を拭く、体位を工夫する、食事やこまめな飲水を促す
などが挙げられます。
尚、WHOの出産ケアガイドライン2018 (正常出産ケアガイドライン1996の改訂版)には、
・不必要な医療介入を減らす
・産痛緩和のための硬膜外麻酔の選択
・妊産婦自身の意思決定への参画
といった、女性中心の視点でケアが行われるよう提唱されていますので、そういったことも臨床現場で見学なさると、満足のいくお産に対しての気づきが多い学びになるでしょう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。 学びの深い実習になるといいですね、頑張ってください。